ピンクとキラキラ

世界の終わりに寿司が食べたい。

スペアリブの角煮

ゴールデンウィーク、1週間分の食材をスーパーで買い出しする時に、絶対に買おうと思っていたものがあった。

それは、スペアリブ。骨付きのやつ。

骨のついた肉っていうのは美味いということがあらかじめ決まっているようなものだ。ただ、日常で買うのにはかなり勇気がいる代物だ。鶏の手羽元なんかは安くなっているとたくさん入っているのを買うけれど、あんなに脂がたっぷりで、ゴテゴテのお肉はなかなか手が伸びない。

でも、ゴールデンウィークくらいは、塊で骨付きのスペシャルなお肉を買ってもよいのでは?(他に何をするのでもないのだから)と思って、思い切った買い物をした。

あと、実を言うとスペアリブにはちょっとした思い出がある。社会人1年目にCMの制作をしていて、フランス人男性がフライパンでスペアリブのハーブ焼きを作るシーンというものを撮った時、スペアリブ未経験だった22歳の私は、その焼かれ姿(?)があまりにも魅力的で、初スペアリブを自分の手で調理したもので経験すると心のどこかで決めていたところがあった。あれから5年以上、そんなことはすっかり忘れていたのだけど、最近近所のスーパーがやたらスペアリブを仕入れるので思い出し、タイミングをうかがっていたのである。

そんなこんなで念願なスペアリブを購入したものの、具体的にどう調理していいかわからず、ただ骨がついているということは骨から良〜い出汁が出るということと思い込んでいる節があるため、cookpad

スペアリブ 煮る

で検索した。上の方に出てきたスペアリブの角煮というのがピンときてしまった。

テラテラのスペアリブ、圧力鍋でホロホロになった骨付き肉、その最高な姿がありありと思い浮かんだ。

 

……

 

圧力鍋は便利だ。

原理はよくわからないけど圧力をかけると食べ物というものはこうも柔らかくなるのかと毎度感動してしまう。

最初に油とニンニクをフライパンで熱して、ニンニクが薫ってきたらスペアリブを両面焼き目をつける。

これだ〜〜〜!!!

私が恋焦がれたものが目の前に現れた。

焼き目がついたスペアリブの美しい姿、感動の再会。

あれはCMの撮影だったけど、あの時のフランス人モデルの「おいしそう…」って顔は演技じゃなかったと思う、多分。

そういえばあの時は三日三晩ほとんど寝ずに撮影していて、もはや意識朦朧としていたけど、スペアリブの美しさだけははっきりと覚えている。

さて、焼き目がついたら醤油、みりん、酒、はちみつ、少し五香粉を投入した圧力鍋に入れて、蓋を閉め、丁寧にじっくり圧力をかけていく。40分くらい高圧を保ったあと火を止めて冷める。

 

ここまできて私は、「スペアリブ」以外、夕飯のために何も用意していないことに気づいた。

焦って冷蔵庫を開けると、数日前に酔っ払ってニンニクとめんつゆに漬けておいたゆで卵があり、酔うと煮卵を作りがちな自分に100000回目の感謝をした。

あとは「角煮には青菜」主義であるので、野菜室でしなりかけていたほうれん草を茹でた。

 

圧力が完全に抜けたら、圧力鍋の蓋をあける。最後に煮汁を肉に絡めながら煮詰める。

汁がとろとろしてきたら完成!

 

完璧な見た目が誕生してしまった。

角煮、青菜、卵!

完璧すぎる。完璧な、私とスペアリブの再会。

ほろほろで、とろとろ。ビールがぐびぐびいけちゃう。

今まで忘れていたけど、今後半年に一回は謁見したい、スペアリブ。

 

……

 

そういえば、私が初めてスペアリブを見たCMは好評で、2年契約だったのがまだ延長されているらしい。

三日三晩も徹夜したのはその仕事くらいだったし、初めての大寝坊をかましたのもその仕事だったし、思いがけずナレーターになりかけた(クライアントの社長が最終ジャッジで却下したが…)のもその仕事だった。

 

CMの仕事を辞めて4年半になるけど、私の仕事がまだ残っているのは嬉しい。

私は多分、死に物狂いで働いたあの1年半の思い出を磨きながら(つまり美化させながら、大事にしながら)生ていくんだと思う。