思い出サウンド
ラジオから、懐かしい歌声が聞こえる。
私が中高生の頃、仙台で活動していた「カラーボトル」というバンドの曲。
仲の良かった友達に教えてもらって知ったこのバンドは、2007年にメジャーデビューし、地元メディアにもよく取り上げられていた。
いつの間にか自らは聞かなくなっていて、この曲で思い出すのはいつも中学生の頃の風景だ。
朝、
田園の中を、風を切って自転車を走らせる。
いろんな虫や動物の声が流れていく。
1人でのんびりと山の麓の学校に向かう朝。
山の緑と空の青のコントラスト。
干からびたミミズ、ほぼ空の直産販売ロッカー、顔にかかる蜘蛛の巣。
ミミズクの鳴き声がする梅林の中をくぐって、まだ人気の少ない校舎に向かう。
窓が開け放たれた教室には、新鮮な空気が出たり入ったり。
裏が杉林なので、冬は花粉地獄だけど夏は涼しい。
放課後、
西日の差す教室。
管楽器の不規則な練習音、運動部の掛け声、ひぐらしの鳴く声。
部室のカビ臭い匂い、焦げたカーテン、古くて軋むパイプ椅子。
帰り道、
薄暗くてもうお互いの顔もよく見えない頃。
近くの商店の駐車場でだべり続ける。(近くにコンビニはない)
投げられる指定カバン、ゆれるダサい制服、消費されるうまい棒。(本当は買い食い禁止)
帰り際、うっかり私たちを見つけた先生の「早く帰れ〜」という気だるい声、私たちの「はーい」というその気のない返事、鳴らされる気の抜けたクラクション。
暫くして、喋り疲れ、ぼんやりとした闇をかわすように、散っていく私たち。
月によって映された自分たちの陰をおいかけてゆく帰り道。
ガマガエルや鈴虫の声、若い稲穂のざわめき。
少し遠くに聞こえる、国道の車の音。
大きな大木が、歯を擦り合わせて「早く帰れ」と先生みたいに言っている。
幼馴染の2人と並べる、シルバーフレームのママチャリ3台。
うまい棒なんてあっという間に消化して、ペコペコなお腹を抱えて家に帰る。
あの青春時代の夏を、カラーボトルは鮮やかに呼び起こす。
夢のようなあの時間は、もしや本当に夢だったかもしれないと思ってしまうところを、
確かにあの時間はあった、と力強く歌ってくれる。
かなり前に書いた暑中見舞いを、数日前に出した。
ぽつりぽつり、返事が返ってきていて、アナログ通信のよさをまた噛み締めています。
このブログを読んでるよ、と書いてくれた友人がいて、なんだか嬉し恥ずかし。(きみだよ!)
おやすみなさい。