ピンクとキラキラ

世界の終わりに寿司が食べたい。

三菱電機「霧ヶ峰」のCM

ツイッターで検索したら、同じことを感じている方がチラホラいらっしゃったので、書きたくてうずうずしていました。

なにせ、前職はCMつくっていたもので。

CMについて、くどくど言います、ごめんなさい。

 

三菱電機ルームエアコン「霧ヶ峰」のCM。

杏とオードリー若林が夫婦の設定のシリーズ物。このキャスティングはちょっと、狙っているところは分かるんだけど微妙だなーという感じ。

まあ、そこは今回どうでも良くて、問題点は2人のセリフと服装の整合性。

 

2人のセリフから

若林(夫)は暑がり、杏(妻)は寒がり、とほぼ明確に読み取れる訳です。

実際は

若林「寒がり〜〜」

杏「暑がり〜〜」

※順番逆かも、スミマセン

と言っているのだけけれども、相手に向かって不満げにさけぶ?演技から、相手のことを指すセリフであると思われます。

 

夫は暑がりさん、妻は寒がりさん。

まあ良く見る光景ですね。

 

そういう時、暑がりさんはなるべく涼しい格好をしてから、それでも暑い時に不満を述べますよね?

逆に、寒がりさんはなるべく暖かい格好をしてから、それでも寒い時に不満を述べますよね?

 

でも、このCMでは

若林(暑がり)が長袖(うでまくり)

杏(寒がり)が半袖

を着ているのです!

(ここで長袖を着ない杏にイラッとしている人がTwitter上で多かったですね)

 

ここの整合性がオカシイ。

見た人が、直感的に「ン?」となるくらいオカシイ!

というのがこのCMのモヤっと(或いは、イラッと)ポイント。

 

ここまでは皆さんが感じていることを少し細かく説明した訳だけども。

ここからは、CMを作っていた人間として、あくまで推測で、ちょっと文句を言いたい。

あー興奮してきた。

 

まず、CMの企画として「暑がりさんの夫と寒がりさんの妻」という2人の役割は決まっていたと思うんです。(実際冬バージョンでもそういう役割なので。)

 

そして、CMというのは、私の経験上、どんなに予算がなくても、スタイリストがついて、「衣装打ち合わせ」というものをやります。

ましてや大手メーカー三菱電機の、タレントもののCMですから、予算がないということはないと思うんで、絶対やってます。有名な商品だし。そういうものなんです。

 

広告代理店、監督、プロデューサー、制作進行スタッフ、スタイリストあたりが集まって、企画意図などを共有の上、どういう服を用意し、着てもらうか話し合う場が設けられているはずなのです。

 

そして、そういった

暑がっている人:寒がっている人=薄着:厚着

という整合性は、こういう場で必ず考えられるはずなんです。

 

まず、ここで薄着厚着問題が話し合われてなかったとしたら、わたしはもう「バカっ」と全員の頭をハリセンで叩きたいですね。

 

CMっていうのは、説得力を持ってなんぼなんですよ。持論ですけどね。(1年半しかCMづくりをやってない人間でもブログだと偉そうに持論言えるからいいですね。)

演出とかトンマナ(ググってください)とか、どうしても芸術面というのはクオリティが反映される部分なので、CM作っている人間でもそこに重きを置きたがる一定の人たちはいます。

 

でも、CMはエンタメである前に、広告だということ(今は色んな広告があるので一概には言えませんけどね!)を、忘れないで…説得力、つまり細かいところ、大事。

 

 さて、衣装打合せでは問題にならなかったとして。

でも、どこかしらの段階で意識的に若林が長袖、もしくは杏が半袖になっているんだと思うんです。

 

だって普通、夏の設定だったらとりあえず半袖じゃないですか?
どっちも半袖で、「寒がり」な杏が「いや、寒いならもっと厚着してから文句言えよ」という批判を受けるならまだ自然だと思うんですが。わざわざ、若林に長袖を着せているように思うんです。

 

私の推測では、この整合性の問題の発端源は、この商品の機能実験結果の問題かな、と思っています。

 

今回CMになっている霧ヶ峰(ムーブアイ極)商品ページを見てみると、

三菱電機 ルームエアコン霧ヶ峰ムーブアイ:暑がりさんと寒がりさんの霧ヶ峰、誕生。「きもちいい」のクオリティが違う。霧ヶ峰

暑い寒いの感覚は、手先足先の温度変化を見ればわかる。

と書いてあり、ムーブアイ極は、人間の手先足先の温度の違いを見分け、2つのファンによって、それぞれの温度感覚に合った風を送る機能があることが示されています。

 

こういう電化製品は、製品発表前に色々と機能実験が社内で行われているのが通常です。

この実験結果として、夏に、冷房をかけている状態で、長袖を着ている人に対して「この人の温度が下がっている」と認知しづらく、逆に薄着の人に対して「この人の温度が上がっている」と認知しづらいなどの結果が出ているのではないかな?と勝手に推測しました。(あくまで仮定ですよ!!!)

 

クライアントが1番恐れるのは、CM中で出来ていたことが、商品購入者にはできなかった、という事態です。

嘘の広告になりますからね。

そうなると、CM中では、たとえ少しの違和感が出ていても、実験結果で機能が、正常に(明らかに)動作した範囲のことしかできません。

あくまで仮定の話で、そういった実験結果だった場合、その実験はちょっと足りないですよね、たぶん。

CMとは直接関係ないので流しますけど、冷え性の人は長袖着てても寒いし、体温高い人は半袖着てても暑いもんです。

その事態を、実験結果に反映させられなかったとしたら、こりゃもうCM作る側は何にも言えなくなってしまいます。

CM作る側だって、実験結果で効果が出ないことを広告上でもできません。

 

これはあくまで仮定ですよ、ですから、本当に霧ヶ峰がこういう実験結果なのかは分かりません。

わたしは三菱電機やその他メーカーの回し者じゃありません。

 

ただね、言いたいのは、通常、CM作る側は、こんな事(半袖長袖問題)を見過ごすほど、というか視聴者に違和感を抱かせるような変なところを放って置くほど、適当になんて作ってないんですよ。

 

この時代、法律や社内規律だけじゃなくて、多様な視聴者の幅広い価値観をも気にして、広告コピーやら、セリフ、仕草、服装も含め、沢山のことを複数人で吟味して決定していきます。

たまに、ノリで作っちゃうこともあるかもしれません。誰かの独断で決定してしまうこともあります。それでも届いて欲しい誰かに届くように吟味されていることは確かです。

広告は誰に届いてもおかしくないものだからこそ、本当に細かいところに気を配っています。特に制作会社はそうです。

 ※以下の図は広告を作る時の発注の流れを簡単に図解してみました。いろんなパターンがありますが、とりあえずオーソドックスなやつです。

制作会社の下にはもっと色々います。

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だってね、制作会社の人間も、そこから発注される人達も、全員プロなんです。

適当にやっていたら仕事が来なくなる人達なんです。

自分の腕でご飯食べてるんですよ。

そのCMの公開後、商品の売り上げが伸びたり、youtubeで話題になったりすれば、また仕事が来るんですから。

 

あ、熱くなっちゃった。

すみません、ちょっと落ち着きます。

つまりね、CMを見る人達皆にそうしろとは言いませんが、作り手の意図を汲み取ってみようとすると、また違った見方ができるかもしれませんよ、と言いたいです。小さな声でそっと。

 

霧ヶ峰のCMに関して、話を戻すと。

通常適当に作ってないからこそ。

プロだからこそ。

この整合性をないがしろにしないで欲しかったな。

実験結果とかのように、どうしようもない事情があったとしても、もう少し工夫のしようがあったと思うし、

本当に見過ごしていたならプロとして怠慢だと思う。

 

CMって、好感度ランキングがあることから分かるように、イラっとされたら良くないと思います。

いくら頭に残っても、イラっとした広告出してる会社を使おうと思わないですから。広告として失敗だと思います。

(それでも、社会的に意味のある広告はたくさんありますから、一概には言えませんが)

 

うーん、霧ヶ峰のCM制作チームには、次に期待したいかな。(もう撮ってしまっている可能性大ですが)(偉そうにすみません)

どこかに、この問題の解答があれば教えてください。

 

 

なんだかネガティヴなことばかり言ってしまったな。

CMの批評はあまり好きじゃないけど、たまに納得できないものを見ると語りたくなってしまうんです。ごめんなさい。

 

ちなみに、霧ヶ峰サウンドロゴ(「キーリーガーミネ〜〜〜」ってやつ)は天才的だと思うし、BGMもめっちゃ好き。

音だけで霧ヶ峰のCMだって分かるんですよね。これはすごいことです。

昔からCMうってた老舗ブランドは、やっぱり財産持ってるな、と思います。

 

長々とごめんなさいでした。

CMって面白いよね。

 

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いぬがなつばて