仕事を辞めた話
東京で働いてたのは大学出てからの1年半。
ドチャクソ(一度使ってみたかった)忙しかった。
暦通りの休みがあるはずなのに、休日出勤がデフォルトで、2連休は飛び上がるほど嬉しかった。
次の朝まで仕上げなきゃいけない仕事が出れば平気で徹夜した。
あまりに仕事脳になりすぎていて、休んでいても、友達と遊んでいても仕事の進行について考えているし、お酒飲んでても社用携帯のメールチェックは1時間おきにするし、彼氏と喧嘩していても上司や取引先から電話はかかってくるし、家でブイヤベース作ってても急に会社に呼び出されたりもした。(ブイヤベースって作りたてが一番おいしいの知ってました?)
映像を作りたくて、その会社に就職した。
映像を作る、まさにその現場にいたかった。0から生み出すのが、例えば企画を作るプランナーや、演出をつけるディレクターだとすれば、わたしがやっていた仕事はその人たちが5や8くらいまで作ったものを、10に引き上げることだ。
クオリティーを上げる仕事、と会社の偉い人たちが言っていた。
好きな広告に携われて、わたしは幸せだと思った。
長時間働くのは辛いけど、そのぶんやりがいがあった。
毎日が文化祭前日のような高揚感の中で、辛いけど楽しい、楽しいけど辛い。最悪だ、と思う次の瞬間に最高の瞬間に出会ったりする。
ジェットコースターみたいな毎日。
彼氏に給与明細を見せたら、残業代を、実際に残業した時間で割った金額を算出されて、それが500円をきっていて、(フレックスなので実際は特殊な残業時間の計算方法だった)この仕事を続けるなら俺たちはやっていけないかもしれない、と言われた。(いつもデートは22時以降からで、よく仕事が終わらずに遅刻していたので、言いたいことはよくわかる)
プロデューサーがスポンサーに提出する見積書の、私の単価が5万円だった。
3ヶ月間くらいで5万円。
もちろんお給料は会社の収益から入ってきているわけだから、私のお給料とは別だけど、私の仕事の値段だと思った。
3ヶ月に一回、定期的に睡眠不足で鼻血が1日一回出る一週間がくる。第2の生理、と笑っていたらかかりつけの医者に怒られた。睡眠時間が極端に減ることで、ビタミンが不足しているそうだ。
半年に一度くらい、休日出勤の代休を消化しないと労働基準監督署というところが抜き打ち検査に来た時に大変らしく、1週間前後の休みを無理やりもらえるので、なんだかんだいい方だったのかもしれない。
たまには20時くらいに帰れたし。
めっちゃ暇な時は18時には帰れた。
社員はみんないい人で、良くも悪くもアットホームな会社だった。
男性ほど重いものをもてなかったり、鈍臭くて物覚えが悪かったり、あとadobeどころかMacさえも使えなくて、だいぶ迷惑をかけたけど、それでも先輩には可愛がってもらったし、たくさんのことを教わった。
夜な夜な、体力を振り絞るようにして先輩たちと遊んでいた。(場末のスナックや、カラオケバー、お高いショットバーや、ガールズバー。)
でも私は仕事をやめた。
たぶん、あの仕事を続けて行くことも出来た。
彼氏とは別れたと思うし、後悔することも沢山あるだろうけど、私が私のために好きな仕事で働いて稼いで生活して、東京で生きて行くことに誇りを持てただろうし、知り合う人たちから刺激を受けて同じような、もっといい環境の仕事が出来たかもしれない。
そういう喜びに繋がる道も、見えてはいた。
そういう人生もありだった。
でも私は、自分の生き方として、結婚して子供を産みたい、と思った。
それは、たぶんあそこにいたら叶わなかったと思う。
わたしは、世代的にも、環境的にも、どちらかと言うと「仕事をバリバリこなす人」「仕事と趣味を両立できる人」が多く、そういう人生を楽しんでいる大人たちや同期のなかにいたので、男女問わず、結婚をすること、若いうちに子供を産むことを、そういう生き方を重視しない人たちに大きく影響を受けた。
一方で、わたしの両親や親戚は、二十歳を超えると結婚のことを口にし、なるべく早く子供を産めと平気で言うような人たちだった。
「結婚しない人もいて、それは自由だけど、絶対に結婚して子供を産む方が幸せよ」と言う母親が我慢ならない時もあった。今では、もうそれも自分の経験則で言っているのだと聞き流せるようにはなったけれど。
それを踏まえた上で、「結婚して子供を産む人生」を選びたいと思った。
まあ、仕事が仕事だったから二択になってしまっただけだし、そう思うにはいろんな要因がきっとあるのだけれど。
私は、この人生を、今目の前にある未来を、自分の手で選びとっていきたいと思っている。
たまには、流れや運に任せなければいけないときもあることも、十分わかっている。
今は、身動きが取れないけど、それは自分で選んだ環境で。
実は結婚も子供を産むことも、まだどうなるかわからなくて、大変に宙ぶらりんだ。
でも、そういうときもある。
今は、目の前にあることをこつこつ続けていこうと思う。
(「ひよっこ」のみね子たちのように!)
「だいじょぶかな、私たち。」
「わかんねぇけどさ、目の前のことを一生懸命頑張るしかないよね」
「そうだね。そうしてればいいんだよね。」
「うん」
(ひよっこ)
あー本当にひよっこ最高ですね。
こんなことをこんなところに書いても何にもならないんだけれど、たまには自分を見つめ直したくって書いてしまった。